1. 解析するアンテナを選択
2. リアルタイム電流分布と実効長等価長方形
定常高周波モード3. 設計パラメータ調整
4. アンテナ工学・数理講義
DOC-v2.7アンテナ実効長 $l_e$ 15ステップ完全数理導出ガイド
マクスウェル方程式と電磁波の定在波放射理論に基づき、実効長の物理的定義から半波長ダイポールアンテナの公式導出までを、順を追って15個のステップで完全に説明します。
受信誘起起電力の定義
空間を伝搬する電波の電界強度を $E \ \mathrm{[V/m]}$ とし、これによってアンテナの両端(給電部の開放端)に生じる最大受信誘起起電力を $V_0 \ \mathrm{[V]}$ とします。このとき、最も根源的な比例関係として以下のように定式化されます。
この比例定数 $l_e$ こそが「受信実効長(物理的に電界から電位差を取り出す等価的な長さ)」の定義そのものです。
相反の定理(可逆の定理)の適用
電磁気学における「ローレンツの相反定理(可逆定理)」に基づき、アンテナが「送信アンテナ」として動作する場合と「受信アンテナ」として動作する場合で、物理的結合係数(実効長 $l_e$)は厳密に同一であることが保証されます。
これにより、受信誘起電圧の複雑な結合計算を行う代わりに、計算が遥かに容易な「送信時の電流分布 $I(z)$」を利用して実効長を導出する手法が正当化されます。
送信時における微小放射電界 $dE$ の定式化
アンテナ軸を $z$ 軸とし、中心を原点とします。アンテナ上の座標 $z$ における長さ $dz$ の微小区分に、電流 $I(z)$ が流れているとき、この微小区分が十分な遠方(距離 $r$)に作る放射電界の微小変化 $dE$ は、真空の特性インピーダンス $\eta_0 \approx 120\pi \ \Omega$ と位相定数 $\beta = \frac{2\pi}{\lambda}$ を用いて以下のように定式化されます。
ここで $\theta$ はアンテナ軸に対する観測点(遠方界)の角度、 $j$ は虚数単位、 $e^{-j\beta r}$ は空間の位相遅れ(波動の伝搬)を示します。
重ね合わせの原理による全電界の積分公式
アンテナ全体の物理長を $l$ とすると、アンテナ全体から放射される全電界強度 $E$ は、各微小部分からの放射成分 $dE$ をアンテナの全範囲にわたって重ね合わせ(定積分)することで求められます。
アンテナ上の各点の電流の寄与が、そのまま線積分 $\int I(z) \, dz$(電流分布が描く包絡線の「面積」)として全電界に比例することがわかります。
等価一様電流アンテナ(仮想長方形)の導入
ここで、アンテナ上を流れる電流分布が一様ではなく複雑に変形しているアンテナを、「どこでも給電点電流 $I_0 = I(0)$ と同じ大きさの電流が一様に流れている仮想アンテナ」に置き換えます。
この等価な仮想一様アンテナの長さを $l_e$ と定義すると、この仮想アンテナが同じ遠方地点に作る放射電界 $E$ は、積分が単なる積に変わり、以下のように極めてシンプルになります。
実効長 $l_e$ の一般数理方程式の確立
「現実の複雑な電流分布を持つアンテナが作る電界(Step 04)」と「仮想的な一様電流アンテナが作る電界(Step 05)」は電気的・物理的に全く等しくなければなりません。双方の右辺を等置します。
共通係数をすべて相殺し、実効長 $l_e$ について解くことで、実効長の根源的な一般定義式が完成します。
半波長ダイポールアンテナへの適用
ここから、最も重要かつ標準的な実用アンテナである「半波長ダイポールアンテナ」の実効長を数学的に解きます。アンテナの物理長 $l$ は波長 $\lambda$ のちょうど半分です。
アンテナの物理的空間境界(積分区間)の決定
給電点(アンテナの中心)を座標の原点 $z=0$ とします。このとき、アンテナの両先端の座標は物理長 $l = \lambda/2$ の半分ずつを左右(上下)に振り分けた座標となります。
これにより、定積分を実行する際の積分区間が $[-\lambda/4, \lambda/4]$ に確定します。
定在波電流分布関数 $I(z)$ の定式化
アンテナ導体上の電流は両先端(開放端 $z = \pm \lambda/4$)に達すると反射するため、端部で必ず電流値がゼロになります。共振状態にある半波長ダイポールアンテナ上の定在波電流分布 $I(z)$ は、中央を最大電流 $I_0$ とする以下のコサイン関数で表されます。
※端部の座標を代入すると、 $\cos(\pm \beta \lambda/4) = \cos(\pm \pi/2) = 0$ となり、開放端条件を満たします。
位相定数 $\beta$ と物理波長の関係式
数式の展開において、位相定数 $\beta$ と実空間の物理的な波長 $\lambda$ を結びつけるために、円周率 $\pi$ を用いた以下の絶対的な恒等式を確認しておきます。
定積分のセットアップと規格化
Step 06 で導いた一般公式に、積分境界とコサイン波電流分布を代入します。
分母と分子にある共通因子である給電点電流 $I_0$ が綺麗に相殺(規格化)され、純粋な幾学積分に整理されます。
関数の対称性(偶関数)による積分の簡略化
被積分関数である $\cos(\beta z)$ は偶関数(左右対称,$f(-z) = f(z)$)です。したがって、マイナス側からプラス側への積分は、ゼロから右半分の積分結果を求めてそれを2倍する処理と同じになります。
原始関数の導出と定積分の代入展開
合成関数の積分公式より、 $\cos(\beta z)$ の原始関数は $\frac{1}{\beta} \sin(\beta z)$ になります。定積分の演算括弧を展開します。
積分の上限である $\lambda/4$ と下限の $0$ を具体的に代入します。
三角関数の具体的な数値評価
微分積分学的な極限および三角関数の基礎値を評価します。 まず $\sin(0) = 0$ であり、第一項 of 位相部分は Step 10 の関係式を代入すると、以下のように簡理化されます。
$\sin(\pi/2) = 1$ であるため、展開式を次のように簡素化できます。
半波長ダイポール実効長公式の決定と物理的比率
最後に $\beta = \frac{2\pi}{\lambda}$ を代入して分子・分母を整理します。
求まった半波長ダイポールの実効長 $l_e = \frac{\lambda}{\pi} \approx 0.318 \lambda$ を、実際のアンテナ長 $l = 0.5 \lambda$ と比較します。
これより、正弦波電流分布を持つ半波長ダイポールは、その物理長 $l$ の「約 63.7%」の長さを持つ一様電流アンテナ(等価長方形)と全く同じ等価電磁エネルギーを放射・吸収することが完璧に証明されました。